部活の朝練習を、いつものようにぐるっと回っていると、1階の3年生の教室に人影が見えました。多くの3年生は8時ごろに登校してくるので、どうしたのかなと思い、声をかけました。
「おはよう。どうしたの、早いね」
「部活がなくなったけど、朝は今までと同じように5時半に起きているんです」
「それはいいことだね。じゃ、ここから懐かしい部活をながめてるといいよ」
「いや、それより、廊下がすごいんです!」
と、とても驚いた表情をしました。
入学してずっと部活をがんばってきたこの子は、毎朝、欠かさず練習に参加し元気なプレー、大きな声を見せてくれていました。だから、まさか自分たちの教室の廊下で吹奏楽部がずらっと並んで練習をしているなんて思っていなかったようです。雨で外練習ができず自分たちが廊下で練習する時は、吹奏楽部は音楽室で練習しますから。
学校のことは何でも知っている3年生。でも、こうやって新鮮な発見があり、それを素直に表現してくれた朝のさわやかなひとこまでした。
3年目にして初めて見た(9月5日)
全日本中学校陸上競技選手権大会2日目(8月22日)
熊本は夜中に雷を伴う強い雨が降りましたが、朝にはそれもあがり、「最高気温予想35℃」という青空でした。
今日のトラック競技の最初の種目は高嶋くんの出場する1500m予選です。ですから、朝一番で会場入りし、入念なアップをして臨みました。800mで転倒した影響はなさそうです。
1500mは800mと違い、最初からオープンコースです。ものおじすることなく、しっかりとスタートラインに立つ姿が確認できました。スタート!中盤から後方に位置しています。やや上体がいつもより揺れているように見えますが、足の動きは大丈夫そうです。しかし、徐々に順位を下げていきます。しかし、いつものレース運びがそうですので、そんなに心配はしていません。ラスト1周を告げる鐘が鳴りました。その時は最後尾。もちろん、いつものようにスパートをかけ追い上げます。しかし、ここは、全国の舞台。なかなかその前をとらえられません。二人を抜いたところでゴールしましたが、残念ながら決勝に進むことはかないませんでした。
走り終えた高嶋くんとしばらく話すことができました。最初に出てきた言葉が、
「やっぱり最初から先頭についていかないとダメですね。それが分かりました」
でした。そして、
「今度は日産スタジアム(横浜)であるんで、その時はそうします」
とも。彼の目はもう前を見ていました。そして、そのために自分がどうすべきかを、この大会でつかんだように感じました。
彼が駆け抜けた熊本は阿蘇山を擁し「火の国」と呼ばれています。
「今夜もう一泊して、明日は熊本観光をします」
とあどけなく笑うメガネの奥に、マグマのように燃える闘志を見ました。
全日本中学校陸上競技選手権大会1日目(8月20日)
学校で運動部に所属する誰もが目標としてきた全国中学校総合体育大会。しかし、そこに立つことは、ほんのわずかな子しか許されません。その一人、陸上部の高嶋くんが熊本県民総合運動公園「えがお健康スタジアム」に立ちました。
この日の熊本は、雲ひとつない快晴で、わずかに周辺に見える雲は入道雲でした。この夏を走り抜いた子たちに一番よく似合う空を用意してくれたようでした。そんな中、高嶋くんは800mに出場しました。全部で10組あり、その中の上位2位までと、プラス4人が午後からの準決勝に進むことができます。進んでいくレースのタイムを見ていると、「これはいけるぞ!」という気持ちが強くなってきました。というのも、上位の記録が高嶋くんの持ちタイムより遅い組もあるからです。以前にお伝えしたように、これが愛知の長距離陣のレベルの高さなのかもしれません。そんな中、出場する第9組です。スタートから、先頭集団につきました。バックストレートで3位につけています。余裕もありそうです。そして、300mにさしかかった時、それは起きました。
高嶋くんの手が大きく動きました。それと同時に、体も大きく前のめりに。次の瞬間、いつもはすっとした姿勢で走るその体がトラックに打ち付けられました。転倒です。後続の二人もそれに巻き込まれるように体勢を崩しました。
高嶋くんがゴールラインを越えたのは、他の子よりも、そして自己ベストよりも大きく遅れてからでした。ゴール直後に、膝に手をあてしばらく動かなかったその姿が、無念さを物語っていました。
医務室で手当てを受けましたが、かすり傷程度で、あさっての1500mの出場には影響はないとのことでした。
中総体東海大会2日目(8月10日)
今日、東海大会に臨んだのは陸上部の二人です。会場となった静岡県小笠山総合運動公園エコパスタジアムは、5万人超の収容人数を誇るすばらしい競技場です。
そのトラックに最初に登場したのが、800mに出場する高嶋くんです。この大きな競技場をも楽しんでいるような落ち着きです。レースも常に2位をキープして、1分59秒97で予選通過を決めました。
次に登場したのが、2年100mに出場した大城さんです。予選最終組に登場し、いつものようにスターティングブロックの位置を決めます。スタート!やや遅れたか。いや、同組の子がよいスタートを切っただけです。その差を少しずつ縮め4位でゴール!各組の2位までプラス二人が決勝に進めます。記録は12秒94。お母さんと一緒に3位以降の選手の記録を調べました。残念ながら100分の4足らず、決勝進出はなりませんでした。
その悔しさから1時間30分後に高嶋くんの決勝です。レーンは一番外側の第9レーン。陸上部の子に聞くと、一番外側は一番前に位置するため他の子の走りが見えないのであんまり好きじゃない、という子もいるそうです。高嶋くんはどうでしょうか。セパレートからオープンコースになって集団になった時にやや後方に位置していました。しかし、これは決勝。レース全体を見渡しながらという感じではなく、必死に食らいついていっている感じでした。結果は、2分02秒98と予選より落としてしまい7位でした。走り終わったあと、しきりに首を左右に振る姿が印象的でした。
しかし後で顧問の分析を聞くと、「2年生対決は制しました」とのこと。東海大会に出場している800mの選手のうち2年生は高嶋くんともう一人だけで、その子に勝ったのです。それを聞いて、来年が楽しみになりました。
楽しみといえば、高嶋くんの表彰が終わったら、すべて終わったはずなのに、二人は帰ろうとはしません。大城さんは100mの決勝を、高嶋くんは全国大会で走るもう一つの種目1500mの決勝を見ていくというのです。二人の目は、もう次のレース、そして来年を見据えていました。頼もしい限りです。
中総体東海大会1日目(8月8日)
台風5号の接近により開催が危ぶまれた今年の東海大会ですが、幸い、進路が北の方に寄ったことで開催地である静岡県で予定通り開催されました。
県大会8位として出場したソフトテニス個人戦は、三重県1位、岐阜県4位、静岡県5位と同組になり予選リーグを戦います。第1試合はいきなりの三重県1位の矢渕中ペア。一方的な展開になるかと思いきや、いきなりのデュース。このゲームは落としましたが、次のゲームもデュース。そして、またもや敗れて0-3。崖っぷちまで追い詰められました。しかし、ここから2ゲームを奪い返しました。敗れはしましたが、手ごたえを感じた試合でした。
その手ごたえが自信へと進化したのが次の試合でした。相手は岐阜の糸貫中です。互いに一歩も譲らず、ファイナルゲームへ。そしてデュースへ。
「デュースアゲイン」
審判のこの言葉を何度聞いたことでしょう。20面あるコートのまわりがどんどん試合を終えていく中、鈴木・瀧川ペアが立つ17番コートだけは、いつまでも試合が続きます。しだいに、周りにいた人たちもざわめくようになるほどでした。
「フォルト」
審判の声がこだまし、力尽きましたが、大勢の方からたくさんの拍手をいただきました。残念ながら決勝トーナメントへは進めませんでしたが、ひと試合ごとに成長する姿はすばらしいものでした。
ひと足先に会場を出ようとする私に、
「こんなところまで応援に来てくれて、ありがとうございました」
と言ってくれました。いやいや、「こんなところまで応援に来させてもらって幸せな思いをしているの先生の方です。ありがとう」こんな言葉からも成長を感じ胸が熱くなりました。
そして、午後からは、1年生大澤さんの200m背泳ぎのレースです。スイミングの大会で来たことのある会場だそうですが、中学校の、しかも愛知県の代表として臨む大会ということで、違った緊張感があったのではないでしょうか。
しかし、レースは前半から飛ばし、いい流れをつくっています。周りは上級生ばかりですが、水の中では関係ありません。33秒62、1分10秒83とラップを刻みます。しかし、徐々に追い上げられてきます!必死に逃げる!結果は2分30秒34と、県大会での記録を上回ることはできませんでしたが、堂々の6位入賞です!来年以降につながる泳ぎでした。