3時間目のことでした。職員室のドアが開き、
「失礼します」
の声。ちょっと恥ずかしそうに、担任の先生に促されるように入ってきました。
「I・J組でクッキーを作りました」
その時、職員室には10名ほどの先生がいましたが、一斉に顔をあげました。I・J組といっても、そこにいたのは2週間後に卒業をしていく5人の3年生でした。先生方のそばへ行き、一人一人に手渡しをしていくと、
「ありがとう!」
「うわ、おいしそう!」
「じょうずに焼けてるね」
「もう、卒業だね。おめでとう」
の声が。
それぞれの子がそれぞれの個性を生かしながら、少しずつ力をつけて成長した3年間。さまざまな体験や多くの人との出会いがそれを後押ししました。
「失礼しました」
大きくなった背中を見送った職員室には、クッキーの甘い香りと、ほんわかとした暖かい風が流れました。春はもうすぐそこです。