教室に大型モニターが置かれ、3年生の子たちがそれに見入っていました。「なんのビデオだろう」という軽い気持ちで教室の中に入りました。
流れていたのは戦争の映像でした。子どもたちは誰一人として動くこともせずそれを観ています。燃えさかる炎、その炎から争うように逃げる人たち。花嫁衣裳を抱きかかえ夫の名前を呼びながら炎に包まれていく女性…。姉と弟がしっかりと手をつないで逃げた先は川。飛び込んだ時にその手がはずれて互いに名前を呼び合うも…。
「今の気持ちをプリントに書いてください」
静かな声で指示をすると、すぐに書き出す子がいる一方で、放心状態でペンを持とうとしない子も。中には、めがねの奥に指を入れ涙をぬぐう子もいました。
これは「国際理解」をテーマにした道徳の授業です。授業していたのはそのクラスの担任ではなく、隣のクラスの先生でした。昨年度から取り入れている「ローテーション授業」です。かつての道徳は、ある決まった価値観や方向性に導くものが多く行われていましたが、今は違います。35人の子が集まれば、35通りの価値観があります。それを互いに自分の言葉で発することで、自分自身の考え方に広がりや深まり、多様性が生まれます。担任ではない先生がローテーションで入るのも、そのためのひとつの方法です。
子どもたちの心は、この時間の中で大きく揺さぶられました。そんな授業が日常の中で行われていることを誇らしく思いました。