静まり返った名古屋文理大学文化フォーラム大ホール。そのステージで2番目に演奏するのが弥富中学校です。課題曲「コンサート・マーチ『虹色の未来へ』」を終え、次の自由曲「大いなる約束の大地〜チンギス・ハーン〜」の準備のための子どもたちの動きが止まった後でした。
一瞬、「尺八?」と思うような音色が、その静寂の中に歩み出しました。フルートのソロです。指揮をする顧問の手は動いていません。それはまるで、何もない大草原にある一本の葉がかすかな風に揺れたような、そんな情景でした。そして、指揮者の指が小さな動き始め、それに呼応するように楽器がだんだんと加わってきます。ひとすじの風が大きなうねりとなり草原を駆け抜けるかのように。
途中で楽器ではなく、子どもたちの声もハーモニーに加わり、壮大なスケールとなって聴く者を包み込みます。「チンギス・ハーン」はモンゴル帝国を興した初代の王です。それまでばらばらだった遊牧民族をひとつにまとめ、中国大陸に進出したことで知られています。種類も音色も違う数々の楽器がひとつになり、大ホールに響き渡るさまはまさにチンギス・ハンの世界観であり、大いなる大地そのものでした。
数週間前に、吹奏楽部の練習をのぞいた時、
「今、指揮、見てた?」
と厳しい指導の声が飛んでいました。求めていたのはこれだったのですね。
演奏を終えた子どもたちを、客席からの大きな拍手が包んだのは言うまでもありません。
ホール内は写真撮影が禁止されていますので、直前の音出しの様子をお届けします。
なお、結果発表はすべての演奏が終わってからになりますので、18時過ぎに掲載します。